
そのまま一緒に車でポートランドへ。郊外の住宅地にある自宅兼デザインオフィス。間違いない。いいブランドだ。

Scottはもともと大手ステンレスボトルブランドのデザイナーだった。自分が目指すデザインがコストカットの要求から実現できなくなったとき、彼はスパッと潔く辞めて、自分が信じるもの作りを始めることにしたのだ。

自分がイイと思うものを、少量でもいいから、ぬくもりの届く範囲で届けたい。大手量販には卸さない。巨大ECにも流さない。ローカルで地産地消できて、カルチャーを共に作ることのできる、そんなブランドにしたいんだ、とScottは言った。

アメリカには大型展示会では見ることのできない多くのカウンターカルチャー思想のスモールクラフトブランドがどんどん産まれていた。サンフランシスコで始まり、シアトルに移り、ポートランドに渡った、ガレージカルチャーは、アウトドアとライフスタイルを融合して、しっかり地域に根づいていた。Scottは次々とそういったクラフトワークやブランドを紹介してくれた。

新進気鋭のブランドはもう大規模展示会に頼っていない。インターネットとSNSダイレクトマーケティングとShopifyのようなECプラットフォームで、主従が逆転したスモールビジネスが産まれていた。独立してからトライし始めたアメリカ。西海岸のカウンターカルチャー思想としてのアメリカアウトドア。どう扱えばいいのか逡巡していた僕に答えが見つかったような気がした。

数多の都市を訪ねる機会があっても「あ、ここに住んでもイイかも」と初訪問で思える街は少ないものだ。それは一瞬の肌感覚にしかすぎないけれども、その感覚だけでこれまでずっと生きてきてるから、おそらくそういう直感はいつも正しい気がする。

ポートランドは、そんな数少ない街だった。このままここに何度も来ることになる。そんな予感がした。
hodaka