ノース・ドリンクウェアができるまで 〜 成功の物語
それはひとつ想いから始まった。自分たちが好きなものを、自分たちの手で作りたい。
ノースドリンクウェアはどのようにして始まったのか。アイデアの最初のきらめきから、試練と苦難を経て、クラウドファンディングでの成功、そしてその後にいたるまでの物語を、プロダクトデザイナーのマット (Matt Capozzi) が思い出の写真とともに語る。
僕らのノース・ドリンクウェアは、オレゴン州ポートランド在住の3人の友人によって立ち上がったデザインプロジェクトだ。
僕 (Matt Capozzi : 写真右) は 、バートンやナイキといったブランドのプロダクトデザインを長年担当していた。妻でありPRマーケティングの仕事をしているリー (Leigh Capozzi : 写真中) 、独創的なアイデアでマットの数々のプロダクトを実現するエンジニアのニック (Nic Ramirez : 写真左)に声を掛けて始まったんだ。
僕ら3人は、そろってアウトドア・アクティビティが大好きだ。休日はオレゴンの山でスノーボードを楽しむ仲間でもあった。時間を見つけてはアメリカの山々の探求の旅を続けるのが趣味だった。自分たちの旅の人生を彩った愛する山々をいつか自らの手でプロダクトにしたい。僕らはそんなスモールクラフトビジネスを立ち上げることを夢見ていた。
2014年

ビッグアイデア
2014年のある日、僕は、ポートランドの伝統的な工芸技術であった手吹きのハンドメイドグラス工場に出会った。手間のかかる手吹きグラスは産業としてはすでに消え去ろうとしていた。いつもクリエイティブなチャレンジを探していた僕は、この工場に出会って、自分が好きなものをすべてブレンドしてしまう大きなアイデアを思いついた。
地元のクラフトビール+山への深い愛情。伝統的な技術+革新的な製品+プレミアムなデザイン 。そして、すべてアメリカ製(できれば地元製)であること。そのアイデアをすぐニックとリーに伝えた。もちろん、一晩中ビールを飲みながらね。そうやってノース・ドリンクウェアは始まったんだ。

デザイン
USGS(アメリカ地質調査所)の公式地図を3Dデータにして、マウントフッド(オレゴン)、マウントレーニア(ワシントン)、ハーフドーム(カリフォルニア)という西海岸の3州が誇る名山を底にデザインした、パイントとタンブラーのグラスをハンドメイドの手吹きグラスで作ること。それが、アイデアだった。
プロトタイプの製作
まずはニックが、山々を地形図に忠実に3Dプリントしてくれた。プロトタイプを製作するためにそこから石膏の型を作った。3Dプリントという現代の革新的技術。手拭きガラスという古き良き伝統的技術。それらを融合させるコンセプトに興奮していたよ。
ガレージでの日々
平日の夜や週末、それぞれの仕事の合間に、僕の自宅ガレージで石膏型の自作は続いた。もちろんビールを飲みながらだよ。毎晩毎晩、粉塵マスクをしてニックと石膏に向き合った。ノース・ドリンクウェアの未来を想像して夢を語り合いながらだったけど、この時点では、自分たちのアイデアが製品化できるかどうかなど、まったく想像も付かなかったよ。
失敗の連続
できあがった自作の石膏の型を工場に持っていって、グラス製作工場の職人たちとテスト製作が始まった。何度も何度も失敗した。ひとつの失敗からさらにひとつ学び、より良いアプローチを探し続けた。自作の石膏型はグラスを1〜2個作ると壊れてしまうんだ、だけど当然、鋳型の金型を作る自信も金銭もなかった。僕らは何度も石膏で型を作っては、吹き続けた。
改良を重ねて
理想とする稜線の山並みが再現されるよう、何度も型に修正を加え、職人とプロセスを探り、膨大な時間を費やした。ようやくついに自分たちの理想とするグラスが形になってきた。自分たちのアイデアやコンセプトが、自らの手だけで考えたプロセスで、実現する日が近づいてきた。
最初の乾杯
写真は、ついに納得できる最初のグラスを手にして、ビールを注いで最初の乾杯をするニック。僕たちのコンセプトが生産可能であることが証明された。僕らは語った。いけるかもしれない。僕らは次のステップに行くべきだ。つまり、ビジネスにしてみよう、って。
日にちを決める
まずは、いつやるか。2015年の頭にクラウドファンディングのKickstarterでブランドを立ち上げることを決めた。この方法を選んだのは、より広いコミュニティがこのブランドとアイデアにどのように反応を示すか見たかったからだ。というより、生産する金型を製作するための資金が必要だったというのが本当のところだけれど。
ヴィデオ撮影
経験したことのない動画コンテンツやウェブサイトを作ることがいちばんの難関だった。でも、できるだけすべての作業を自分たちの手で成し遂げる挑戦をする、というのがこのプロジェクトのコンセプト。最初の動画はお見せできないほどひどいものだったけど、少しずつ、改善され、試行錯誤しながらひとつずつ、進めてみた。
2015年
より良く、より先へ
僕ら3人は毎日夜遅くまでローンチの準備に時間を費やした。家族や友人も協力してくれた。写真やビデオも揃ってどんどんブランドらしくなってきた。ついにアイデアを世界と共有する準備が整った。
キックオフ
2015年のスーパーボウル・サンデーに、「The Oregon Pint」のKickstarterキャンペーンを開始した。生産用の金型製作をペイしたくて、15,000ドルを目標値に設定してみた。期間は一ヶ月。知り合い全員にこの企画を宣伝し、あとは、ビールを飲みながら、結果を待つのみ。
クレイジーな30日間。
キャンペーンは、信じられない結果になった。オレゴン・パイントは5時間15分で目標の15,000ドルを突破し、28時間で200%の資金調達を達成、5日で2000%を超えてしまった。このビッグニュースはニューヨーク・タイムズも取り上げてくれた。最終的に、30日間で、なんと5,620人の支援者から、530,000ドルもの資金を集めることに成功してしまったんだ。ノース・ドリンクウェアというブランドはこうしてたった一ヶ月で誕生したんだ。
作って、作って、作り続けて。
あとは作るだけだ。その年の秋までかけて、13,000本のオレゴン・パイントを生産し、最初の支援者に届けることができた。その半年間も数多くの試練が待っていたよ。成形、冷却加工、倉庫、パッケージング、Eコマース、ウェブサイト etc...。ひとつひとつ課題をクリアし、ひとつずつ、自分たちで、届けた。
2016年
挑戦は続いて
2015年の秋には、マウント・レーニアをフィーチャーした「The Washington Pint」を、2016年の初めにはそれぞれのタンブラーグラスを発売した。その後も、全米各州の、アメリカで最も愛されているピークを次々と発表して、いまでは10種類のコレクションを揃えている。最初にポートランドのタップバーで夢見ていた、カスケード山脈コレクション、パシフィック・ノースウェストのコンプリートも実現できた。
2017年
特許取得
2017年の春には、ノース・ドリンクウェアのデザインは特許を取得した。多くのブランドがこのコンセプトとデザインを複製し始めていることを知ったからだ。知的財産を守ることは非常に高価で時間のかかることだったけれど、クラフトワークのスモールブランドとしてはもっとも大切なことだと思う。それに、真のオリジナリティを支えてくれたお客様への責任だと考えている。
2018年
The Mt. Hood Blanket
ノース・ドリンクウェアを更なるデザイン・プロジェクトに拡大するために、2018年春にKickstarterに思い切って戻ってみた。マウント・フッドの地質図をフィーチャーしたThe Mt. Hood Blanketを発表した。ポートランドの誇る伝統的ブランド Pendleton とのコラボ商品だ。オレゴン州のペンドルトンの自社工場にて製造されている。心に想う山を、家に持ち帰る。そんな新たなプロジェクトだ。
2019年
The Mt. Rainier Blanket
Mt. Hood Blanketの成功に続き、2019年にはMt. Rainier Blanketを発売した。地元の山を讃えるメイド・イン・USA製品へのこだわりは、日々前進し続けている。
2020年
前進あるのみ
コロナウィルスの問題が拡大する先行きが不透明な時代でも、山を愛する気持ちに変わりはない。ノース・ドリンクウェアは2020年も前を向き続けている。2020年夏には世界で二番目の市場として日本で販売を開始することになった。まだ詳細は秘密だけれど、新たな日本のマーケットに向けた新製品開発にも着手しているよ。どのように成長していくか、期待して待っていてほしい。
Matt Cappozi, Founder and Designer
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